土砂降りの雨の中。
日々の中で死が最も私に近づく瞬間はきっと待っていた電車がホームに滑り込んでくる、あの瞬間だろう。
一歩踏み出せば全てがなくって…ふわっと風が身体に当たったかと思うと、喧騒と一緒に現実が帰ってくる。
ドアの前を開けて立つと、何事もなかったかのように私はまた未来へ運ばれていく。
人身事故が起こると、皆一様に舌打ちして死者を呪う。
いや私だってその一部だ。
死ぬなら迷惑掛けないでくれよ、他人事なのだ。
確かに困るけど、最近は人身事故で亡くなる人を責められない様な、そんな気もしている。
私が困ることとは別に、その人にはその人の自由がある。
死ぬときまで他人のことなんか考えてくれなくていいよ。
好きにしたらいい。
私には死ぬ勇気がないので、きっとあのふわっとした風がやってくる前に、踏み出すことは出来ない。
ここに拳銃があれば今すぐ引き金を引くのに、と思ったのは一度や二度ではないけど。
そこになんの差があるのかはわからない。
孤独に死にたいのかもしれない。